刀法について

『合気道において、剣はその基本にある。では合気道のどういう所に剣があるのか。 先輩方に聞いても納得がいかなかった。そして自分で剣を求め、現在に至っている。そして、やはり、やって良かったと思っている。剣道は竹刀競技であり、剣ではない。力の方向が全く異なるからだ。また木剣の素振りは、基礎体力をつけるには良いが、剣の理合とは程遠い、やるならば、やはり真剣でなければ剣の理合は理解できない。

特に合気道においては、その勝負はミリ単位の感覚で相手を捕らえなければならないため、やはり真剣を扱わないと、その内容は分かって来ない。

だからこそ私は合気道の中に剣の存在を正しく位置付けていきたい。合気道の徒手の捌きの中から取り入れた剣。私と一緒に稽古する人は、この剣を一緒にやって欲しい』

(故西尾昭二)

居合名合気道技血振り
1初発刀
英信流
2受け流し一  教
3後ろ切り回転投げ
4前後切り相半身四方投げ
5左右切り 逆半身四方投げ
6柄押え逆半身片手取り二教
7手首押え相半身片手取り二教
8かわし突き突き三教
9付け込み突き小手返し
香取流
10詰 め入身投げ
11三 方三  教
12四 方正面打ち・横面打ち 四方投げ
13抜き合わせ五  教
水鴎流
14とどめ四  教
英信流
15据 物
 −

1.初発刀

2.受け流し  一教

《剣 対 剣》
上段に振りかぶってくる相手に対し、右足を入身に開き(左足は残す)、剣先は回転させながら、剣を相手の心臓につける。左足をひきつけながら、剣を持った右手を左肩口へ。左足を踏み込みながら、相手の右首へ斬り込む。残心。

《剣 対 杖》
上段に振りかぶってくる相手に対し、右足を入身に開き(左足は残す)、杖を相手の左あばらにつける。剣の要領で、左手を逆手にして前に握りなおし、杖を持った右手を左肩へ。右手の動きを注意し、左足を踏み込みながら、相手の右肩(本当はこめかみ)へ打ち込む。残心。

3.後ろ切り 回転投げ

《剣 対 剣》
上段に振りかぶってくる相手に対して、右足を入身に開きながら左足も引き付け、剣は相手の左脇腹につける。刃筋を返し、右足を右斜め前に踏み出す。相手の左脇下から斬り上げる。同時に左足を引き付けながら、相手の左首筋に斬り込む。

《剣 対 杖》
上段に振りかぶってくる相手に対して、右足を入身に開きながら、左足も引き付け、杖は相手の左脇腹につける。右足をやや右に開きながら、杖の先端を左回しに回して相手の顎につける。その際右手は返って自分の眉間のところに。左手は杖の先端を逆手に握って相手の顎を狙う。次に左足を引き付けながら、右手を握り替え相手の頭部に打ち込む。

4.前後切り  相半身四方投げ

《剣 対 剣》
右足を入身に開きながら左足を引き付け、杖は相手の左脇腹に付ける。右足は右に開きながら、右手は左手のほうに寄せ、杖は相手の顎に、左手は逆手に握り替え、左足を相手の左後方に踏み込みながら相手の左膝を打ち、そのまま振り返って相手の頭上または左腕に打ちこむ。残心。

《剣 対 杖》
右足を入身に開きながら、左足を引き付け、剣は相手の左脇腹に付ける。右足は右に開きながら剣の刃筋を返し、左足を相手の左後方に大きく踏み込みながら、相手の左脇下より斬り上げ、そのまま振り返り、相手の頭上または左腕に斬り込む。残心。

5.左右切り  逆半身四方投げ

刀の操作
左足を踏み出しながら鯉口を切る。右足を踏み出しながら右手が柄へ。左足は右方向に廻りながら踏み出す。左足に右足を引き付けながら、刀は上方に抜き上げ。右足を踏み込みながら、相手の右首筋に斬り込む。次に右足はやや右側に開き、身体は左に旋回しながら左足を引き付け、刀は下からすくい上げるように斬り上げ、刀はそのまま振りかぶり、右足を踏み込むと同時に相手の左袈裟に斬り下げる。刀は右下段脇構えにして、2呼吸後、正眼にして、血振りして納刀。

《剣 対 剣》
左足は相手の右側面に踏み込みながら、剣は相手の右脇下より切り上げ、そのまま相手の右首筋へ。その剣を立てながら右足を相手の左方に踏み出し、剣は相手の振りかぶった左腕へ。右足を開き、剣は相手の左肘を右から巻くようにして左脇下を切り上げながら左足を引き付け、右足を踏み出しながら相手の左首に付ける。残心で左手、左足を下げながら、剣は相手の喉へ付ける。

《剣 対 杖》
左足は相手の右側に踏み込みながら。杖を持った右手は眉間の上に、左手は杖の先端(動き出す以前の後端)に添えて、相手の顎に付ける。右足を引き付けながら。相手の右こめかみを打ち、右足を下げ左手で杖を引き喉に付ける。次に右足を右側に開きながら、その右足にあわせて杖を立て、左足を引き付け相手の左上膊部を打つ。次に右足を開きながら杖は左回りで相手の顎を狙い、左足を引き付けながら、右手にて相手の左こめかみを打つ。左足を下げながら喉に杖を付ける。

6.柄押さえ  逆半身二教

《剣 対 剣》
上段に振りかぶってくる相手に対し、右足を入身に開きながら左足も引きつけ、剣は相手の心臓につける。刃筋を返し、右足を開きながら斬り上げ、返す刀で面を打つ。右手で柄を押すようにして刀をはずし、敵が一歩下がったところを右足を踏み込み下から両脇を制する。右足を開きながら脇を切り裂き、刀を返して相手の左首筋に斬り込む。

《剣 対 杖》
上段に振りかぶってくる相手に対し、右足を入身に開きながら左足も引きつけ、杖は相手の喉に付ける。右足を開きながら左手を、逆手、前に持ち替え膝を打ち、左足を引き付けて相手の面を打つ。右手を押すようにして杖を手前に引き、相手が下がったところを右足を開き、左手を前にして下から顎を打つ。杖を引きながら左足を引きつけ相手の左こめかみに打ち込む。

7.手首押え  相半身二教

《剣 対 剣》
上段に振りかぶってくる相手に対し、左足を前に入身に開きながら、相手の右下から左上に斬り上げ、返す刀を右首に斬り込み、小手まで引く。左足を右足に引きつけ、刀の峰で相手の刀を巻き上げ、左足を踏み込み相手の左手を押える。左手を刀の峰に添え、左足を引きながら刀を引き、左に廻り込み相手の右首にあてて、引き切る。
《剣 対 杖》
上段に振りかぶってくる相手に対し、左足を前に入身に開きながら、杖を左回転させながら相手の顎を下から打つ。右足を引きつけながら右手を前にして相手の右こめかみに打ち込む。左手を前に持ち替えて小手を押える。左手を逆手にして左足を右足に引きつけ、相手の刀を巻き込み、左足を踏み込みながら右手を前にして、相手の左手に打ち込む。左足を引きながら杖も引き、相手が斬りこんできたところを、左足を開き、左手を前にして相手の右こめかみに打ち込む。

8.かわし突き  突き三教

《剣 対 剣》
相手が当方の喉を突いてきたのに対して、左足が相手の右側面に入身し、持った剣は相手の喉を制して、右足を引き付けながら、刀を返して右の鎬で相手の剣を押える。その剣の刃筋を立てながら、下がって上段に振りかぶる相手の心臓に、右足を右に踏み出しながら刃筋を横にして付ける。剣の刃筋を上に返しながら左足を左に踏み出し、右足を引き付け、相手の右首筋に斬り付ける。右手、右足を下げながら相手の喉に付ける。

《剣 対 杖》
左手で杖を持ち、右指で先端を隠す。相手が喉を突いてきたのに対し、左足が相手の右側面に入身し、杖の後端で相手の顎をとらえ、杖は回転して相手の剣を押える。剣を押えた杖の先を右手に持って握り変え、その杖を立てながら右足は右側に踏み出しながら、左足を引き付け、杖を回して相手の喉に付ける。つぎに左足が左側に開きながら、右足を引き付け相手の右こめかみを打つ。右手を握り替えながら右足を下げて、杖は相手の顎へ。

9.付け込み  突き小手返し

《剣 対 剣》
相手が当方の喉を突いてきたのに対し、右足が右側に入身に開き、あらかじめ引き付けておいた剣が下方より上方に回転、相手の左首筋へ、左足は同時に引き付ける。右足を下げながら上段に振りかぶる相手に、左足が左に開きながら剣は相手の左腕から右腕を巻き込むようにしながら右足を引き付け相手の右腕へ斬り付ける。剣先を立てる。相手がそのまま一歩下がるのに付け込み、右足を一歩踏み込みながら、相手の喉に剣先を付け、ゆっくり下がって位取りをする。

《剣 対 杖》
相手が当方の喉を突いて来たのに対し、右足が右側に入身に開きあらかじめ先を下げておいた杖の先端を回転させ、相手のこめかみに打ち込む。左足は同時に引き付ける。上段に振りかぶりながら右足を下げて下がる相手に、左足を左に開きながら、杖を握った左手も一緒に動く。右足を引き付けながら杖を廻して、相手の右腕を打つ。下がる相手に対し、ひねり突き体制で相手の喉に付け追い込む。

10.詰め  3様の入身より

《剣 対 剣》
相手が当方の喉を突いてきたのに対して、右足が右斜め前に入身に踏み出し、相手の左足を払い上げて、その剣は突いて伸びきっている相手の腕を押える。その時左足は引き付けてある。その左足を左斜め前に踏み出しながら、剣は、下がる相手の左脇腹に斬りつけ、相手の右脇下の方に切り抜け、右足は左足に引き付けて、剣は相手の右首筋へ。右足を下げながら剣も相手の喉に付ける。その剣を立てると、相手も上段にかぶりながら一歩下がる。それに付け込む様に、相手の正面に、左足も一緒に添えて、立てた剣は一回転して相手の喉へ。上段のまま退く相手を追い込んで剣を一回転させて上段の上に。その時両足はそろえてある。左足をゆっくりと下げながら剣は相手の喉へ。

《剣 対 杖》
剣の場合と同様に突いてくる相手に、同じように体を開きながら、右手に持った杖の先端を廻しながら相手の左膝または脛を打つ。右手は握り替えながら、突いて伸びきっている相手の左腕を上から叩く。その時左足は右足に引き付けておく。その左足を左に開きながら、杖は相手の左膝を打つ。右足は左足に寄せながら、相手の右半面を打つ。その右足を下げながら、半面を打った杖の左手も一緒に下げて、杖は相手の喉に付ける。次に杖を持った左手を下げる。喉に付けた杖の先端が喉からはずれるので、相手は剣を上段にかぶりながら一歩下がる。それに付け込む様に右足が相手の正面に左足もそれに合わせて揃えて、相手の正面に杖は一回転して正面から相手の喉へ。相手はそのままでまた一歩下がる。それを追い込んで、杖を一転させて相手の上段の上に。両足も一緒に。それから左足をゆっくりと下げながら杖も下げて、杖は相手の喉へ付ける。

11.三方  三教

《剣 対 剣》
相手は上段より斬り下ろす。右足を右に入身に開くと同時に左足を引き付けながら、剣は下から斬り上げる。その剣はそのまま上段から斬り下げる。同時に左足も下げる。剣は相手の左腕の上に。次に右足は右斜め前に開くと同時に押えた剣の刃筋を上に変える。相手はそれによって上段にかぶりながら一歩下がる。それにあわせて、相手の左後ろに左足を踏み込みながら、剣は相手の左脇下から切上げる。上体はそのまま回転、右足はやや右に開いて、剣は一回転して相手の胴または上腕部に斬りつける。斬りつけた剣を握ったこぶしはそのままに剣先だけを廻して剣は相手の首へ。残心。

《剣 対 杖》
上段よりくる相手に対して、右足を右に入身に開くと同時に杖の先端を廻しながら相手の顎へ。杖を握っている右手を握り替えながら左足を引き付けて、杖は相手の真っ向へ。左手で杖を引き喉に付ける。次に右足を右に開きながら杖を握った右手を左手のほうに下げる。左手は逆手に握り替えながら、右手の前を握り、左足を相手の左後方に踏み込みながら、相手の膝を払う。上体はそのまま回転、右足はやや右に開いて、右手は握り替えて、杖は一回転して相手の胴または上腕部を払う。左足を引き付けながら左手を下げて杖を立てながら廻して相手の頭部を打つ。残心。

12.四方  正面打ち・横面打ち 四方投げ

刀の操作
左足を踏み出しながら鯉口を切る。右足は前方に入身に踏み込み、左足を寄せながら剣は上方に抜き、右、左と追い込んで、両足をそろえて踏み出して、真っ向より最下段まで斬り下ろす。膝は、たわみを持たせる。そのままの状態で剣先のみ上げながら、右足は180度右へ踏み込み、剣は一閃して右にいた相手の右下より左脇下へ切り上げる。同時に左足は引き付けながら、身体は180度右に廻り、引き付けた左足は左後方に開きながら、当初左にいた相手の左脇下より斬り下げながら、90度左脇の相手(当初は後ろにいた相手)に方に向かい、剣は掬い上げるように相手の喉を狙いながら振りかぶり、右足が大きく踏み込んで左足も揃えながら上段より中段に斬り下げる。左足をゆっくりと後ろに下げながら剣先を下段にまで下ろす。剣を握った左手は握ったまま左肩の高さに開く。右手は緩めて柄に添えてある。剣先は右膝の上になる。右手を握り替えて、剣先を廻しながら納刀。

《剣 対 剣》
上段または横面よりくる相手に対して、右足は右に入身に開きながら、剣は相手の左下から右上に斬り上げ、その剣が相手の真っ向より斬り下しながら、相手の左手を抑える。その刃筋を返しながら右足を右前方に開き、それによって上段になって一歩下がる相手の左後方に左足が踏み込みながら、相手の左脇から斬り上げる。そのまま上体を回転させ、相手の上腕部に斬り付ける。そのまま一歩下がる相手を追い込み、両足を揃えて、相手の真っ向を攻め、左足を下げながら、剣先は相手の喉へ。

《剣 対 杖》
上段または横面よりくる相手に対して、右足は右に入身に開きながら、杖の先端で顎を打ち杖を廻してこめかみを打つ。左足を下げながら杖は相手の顎につける。次に右足を入身に開きながら、右手を左手のほうに引き寄せ、左手を逆手に握り替え、上段になって一歩下がる相手の左ひざを打ちながら、左足は相手の左後方に大きく踏み込み、上体は回転し、左手は握り替えながら相手の上腕部を打つ。そのまま下がる相手を追い込み、両足を揃えて相手の真っ向を攻め、左足を下げながら杖は相手の顎へ。

13.抜き合せ  五教

《剣 対 剣》
相半身より、逆半身に左足を半歩前に進める。それに対して相手は右八双から当方の左半面に打ち込んでくる。それに対して前に進めた左足を左後方に開き、右足と並ぶ位置へ。剣は左八双に持ってきて、相手の剣を左鎬で受ける。次に、受けた剣を相手の左脇に斬り込む(この場合の呼吸と左足の動きは口伝)。斬り込んだ剣はそのまま斬り上げ左逆八双の位置に。その剣は直ちに相手の右首筋へ斬り込み、右足、右手を下げながら、左手は離して、刃先に添えて相手の喉元につける。

《剣 対 杖》
相半身より、逆半身に左足を半歩前に進める。そのときに杖の先端に左手を添える(この場合も口伝)。それに対して、相手は右八双から当方の左半面に打ち込んでくる。それに対して、剣の場合と同じように、前に進めた左足を左後方に開き、右足と並ぶ位置に。杖を握った右手は左耳の位置にもって来て、切り込んで来た相手の剣を受け止める。同時に受けた杖は下方より上方に回転、その先端は相手の左膝を打ち、そのまま払い上げるように左八双へ(その間の左足の動きは口伝)。その杖は直ちに相手の右こめかみへ打ち込む。右足、右手を下げながら左手は離して、杖の先端に添えて、その杖は相手の顎に付ける。

14.とどめ  四教

《剣 対 剣》
上段に振りかぶってくる相手に対し、左足を相手の左側に踵から踏み込みながら右脇腹から左脇下に斬り上げる。刀を返し、左足を右足まで引き付け左首に斬り付ける。左足を引き刀を小手まで下ろす。左手を押し出すようにして刀の峰を自分の右腕につくくらいにまで引く。一歩下がりながら振りかぶる相手の心臓に、左足を踏み込みながら突くようにして剣先を付ける。右足を開きながら相手の左脇下を斬り開き、刀を返して左足を引き付けながら左首を制する。残心。

《剣 対 杖》
上段に振りかぶってくる相手に対し、左足を相手の左側に踏み込みながら左手を前にして下から顎を打つ。左足を右足に引き付け、右手を前にして相手の左こめかみを打つ。左足を引き杖を喉に付ける。左手で杖を押し出すようにして先端を喉からはづす。一歩下がりながら振りかぶる相手の喉に、左足を踏み込みながら突くようにして杖の先端をつける。右足を開きながら左手を前に持ち替え下から顎を打つ。左足を右足に引きつけながら、右手を前にして左こめかみを打つ。残心。血振り

15.据物